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2012.06.07 Thursday

金環日食

by 鈴木 祐

A.M.6:30
川崎駅

朝のラッシュがいつもより一際激しい…。彼等は皆一様にそわそわしていた。不安と期待が入り混じって落ち着くことができないでいる。天気は曇り、太陽は未だ顔を出していない。日の出からもう一時間は経っている。
車窓から街の景色を眺める。ふと陽光が射した。
突然、車内から歓声があがる。何が嬉しいのか今の私には知る由もなかった。

A.M.7:00
赤坂見附駅

ほとんど全ての人が足早に会社に向かう。
いや、そうでない。早く地上に上がりたかったのだ。駅から仕事場までいつもならすれ違う人間はほとんどいないのだが、立ち止まって空を見上げている人々が異様に多い。
手を翳しながら、またはへんなサングラスをかけながら…。
そう、今日は金環日食の日。
さんざんラジオのニュースで聞いていたのに、すっかり忘れていた。
急に是が非でも見たい気持ちが湧いてくる。
しかし仕事だ。思考は日常モードへシフトする。

A.M.7:30前後
赤坂見附周辺

皆一斉に空を見ている。いや、正確には普段絶対に直視しないであろう太陽を日食グラス越しに見ている。私は目的地まで急ぐ。
突然、歓声がいたるところであがった。歓声だけじゃない。驚嘆、感嘆、感動が弾けていた。見知らぬ人間同士がその気持ちを共有し合っている。
私は、立ち止まって空を見た。もちろん日食グラスなんて持っていない。しかし、衝動は抑えられない。
…太陽はいつもの姿ではなかった。『言葉にできない』とはこういうことかと思った。
ありがとう、金環日食。君を忘れない。


おわり
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